間違いが許されない場で・・・絶対的に正しく・美しい「礼服」を纏う心得
ブログをご覧をいただきまして、誠にありがとうございます。
長野市中御所のテーラー・GENTLE BREEZE(ジェントルブリーズ)/ヤマギワです。
M様が誂えたスーツが仕立て上がりました。
大人の嗜みとして所有する「礼服」
この度M様から、然るべきお立場や環境を考慮されつつ「(言わば王道の)礼服を仕立てたい」というご要望をいただきました。礼服というのは葬儀などでも着用する性質上‟一切の遊びを排除”する必要があります。そのため生地は礼服用の「漆黒」・裏地やボタンは「黒」を選択し、更には(通常のスーツには存在する)背中の切れ込み(ベント)もなく、トラウザーズの裾もプレーン(シングル)仕上げとなります。
フォーマルウェアというものは‟実用性を考慮して後付けされた仕様は極力排除する”ことから、乗馬の際に動きやすさを担保するために施されたベントや雨の日にトラウザーズの裾を捲り上げたことに由来するターンナップ(ダブル・諸説あります)は存在しません。但し上衣の腰ポケットのフラップはお付けし、いざという席ではポケットに収納していただける両玉仕上げとしました。

‟礼服を纏う”とは大人の嗜み・・・M様は上記のような「決まりごと」はすっかり理解されていらっしゃり、私から特に申し添えることはなかったのですが。
「礼服」とブラックスーツの違い
礼服の生地と、ビジネス等でも着られるブラックスーツの最大の違いは‟光沢感”だと言えます。礼服の場合はより深い黒にするため、糸を二度染め・あるいは濃色染料を用いて高温長時間染色を行なうことで、光りの反射がなく・照明の下でも「鈍く深い黒(漆黒)」に見えるよう仕上げています。そのためブラックスーツと見た目は似ていても光の吸収具合と場の空気感の違いで、実際に並べると一目で違いが分かってしまうものなのです。

なお、近年は炭素繊維(カーボンファイバー)をブレンドした生地も高機能生地として注目されていますが、そのメリットは以下の3点となります。
①軽くて強い:炭素繊維は鉄の1/4の軽さで10倍の強度を有します。これにより強度も増し、型崩れしにくいという特性を得ることができます。 ②シワになりにくい:炭素繊維は復元力(形状記憶性)に優れているため、座りジワや膝シワがハンガーに吊るすだけで戻りやすいという利点があります。 ③静電気を防ぐ:炭素繊維は導電性が高く、冬場の乾燥時でも静電気を防ぎ・埃も寄せ付けにくくなります。
「礼服」とは・・・ご自身の気持ちを表す身だしなみ
現在、礼服に袖を通す場面として最も多いのは葬儀かと思われます。そして絶対に間違いが許されないのも葬儀であり、けっして故人やご遺族に対して礼を失してはならない場面とも言えます。その意味において、ご自身の弔いの気持ちと敬意をしっかりと表現された身だしなみが必須であり、更に付け加えますと‟その着こなし”もきちんとしていることが肝要。つまり葬儀の連絡を受けた後、慌ててクローゼットから取り出した礼服・・・たまにしか着ないものだけに(以前に比べて)お腹が出っ張ってフロントボタンが留められなかったり、ウェストがきつくてトラウザーズが履けないということがないように・・・普段から確認することも大切ですが、Made to measure のジャストフィットが生み出す「美しいシルエット」こそが貴方自身の弔意をきちんと表現してくれる装いであることもお忘れなく。
M様、この度のオーダー誠にありがとうございました。
素敵な佇まいが印象的でした。
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